










同窓会で元バンド仲間に偽の恋人役を頼んだ――ただそれだけのはずだった。
元ボーカルの透と、元ギタリストの椎名律。〇校時代、同じステージに立ちながら決して交わらなかった二人が、十年の空白を経てカラオケボックスで再会する。偽りの恋人のはずが、鍵のかかった密室で椎名が見せたのは、十年間隠し続けてきた本物の飢えだった。
「十年待った」――その一言が、透の中の何かを壊す。
ギタリストの硬い指先が、ボーカリストの敏感な身体を暴いていく。弦を押さえてきた指が肌の上でどんな音を鳴らすのか、一音ずつ確かめるように。カラオケの曲が流れている間だけ声を出していい――その残酷で優しいルールの中で、透は自分でも知らなかった声を搾り出されていく。
本作最大の魅力は、椎名律という男の「矛盾」にある。追い詰めておいて気遣う。攻めているくせに労わる。獣のような飢えと、震えるほどの切なさが同居する声。十年前、暗い客席からボーカルのすべてを見ていた男が、ようやくその手で「演奏」を始める。
音楽と官能が重なり合う、元バンド仲間同士の再会エロス。偽りから始まる恋が、嘘よりも甘く、本物よりも苦い。首筋に落ちた唇の熱が、十年分の孤独ごと溶かしていく――その瞬間を、どうか見届けてほしい。
文字数はハート、濁点など込みで約17622字ほど。
同窓会に偽の恋人として呼んだ元バンド仲間にカラオケで鍵をかけられ十年分を注がれるカントボーイ

